ベネチアングラス

先日のこと。

お気に入りだったベネチアングラスのワンショットグラスが、ふいに割れてしまった。

ちょうどその日は、月が牡牛座を運行中

牡牛座の月は、五感・安心・豊かさを象徴し、「所有」や「価値観」にまつわる感情を揺り動かすことがある。

その余波なのか、私はどこか不安定で、グラスを少し雑に扱ってしまったのかもしれない。

空の太陽は蟹座に。

蟹座は感情を抱きしめ、内なる愛情を育てるサイン。

その日私は、心のどこかで自分の感情を持て余していたようにも思う。

さらに、蠍座のリリスが牡牛座の月とオポジションを形成していた。

影のテーマや無意識の欲求を司るリリスが、感情を象徴する月と真正面から向き合う時。

心の奥底に眠る過去の痛みや、まだ癒されていない感情が静かに浮かび上がる——そんな配置だった。

「手放し」のサイン

グラスが割れた瞬間、私はふとこう思った。

「これは、何かの身代わりかもしれない」

聞いたことがある。

大切にしていたものが壊れたり失われたりするとき、それは自分の身に降りかかるはずだった災いを引き受けてくれるのだ、と。

思い返せば、その前日のミーティングで、私は心をざらつかせていた。

少し苛立ちを覚え、感情的な揺さぶりを受けたことで、

過去に否定されて傷ついた記憶が蘇り、自分で自分を責めていたのかもしれない。

星たちは静かに問いかけていた。

「気づいて」

「その表情の奥にある感情は、本当に欲しいもの?」
「あなたの中に、まだ抱え込んでいる荷物はない?」

その感情は、もうここに置いていっていい。

持ち続ければ未来に軋轢を生みかねない。

だから、大切なものが壊れるという小さな痛みで、

大きな損失になる前に、私に“気づかせて”くれたのかもしれない。

新たな扉

お気に入りだったベネチアングラス。

「今までありがとう。

 あなたがいてくれたことで、私の生活はほんの少し華やかだった。
 とても大切で、美しい存在だった。

 でも、もうあなたばかりにこだわる必要はないんだよね。

 これからきっと、もっと美しくて大切なものに出会うかもしれない。

 とはいえ、あなたのことを忘れるわけじゃない。

 あなたはもう、私の一部だよ。」

少しだけ寂しいけれど

すこし身軽になって、次の階段を昇っていこう。