生まれて始めて小説を書きました。

星読みのことを考えていたら、急に頭の中で話が膨らんで来たので、もうアウルブックで書くしかない!と思いました。初心者なのでたどたどしいですが、お付き合いいただけたら、嬉しいです。ーーー夏休みに入る少し前、中1の一学期もあとは終業式ぐらいという時期になって、今学期最後の数学の授業が始まる前のわずかな時間だった。


チャイムは鳴ったけれど先生がまだ来ていなくて、周りの子たちも歩き回ったり、話したりしている。


私はボンヤリと昨日のことを思い出していた。お母さんにパソコンを借りて配信サービスでアニメでも見ようかなと思ったら、パソコンが更新画面から真っ暗になって見られなかった。



「あー残念。アニメの続き、見たかったのになぁ...」とまた悔しくなっていたら、突然耳に入ってきた会話があった。



「昨日、歌詞をプリントアウトしようとしたら、プリンターがエラーでさぁ」「それ、水星逆行のせいかも。逆行期間に入ったから。水星逆行のときは色々スムーズに進まないらしいよ。」



なんだよ。それはーという嘆きと同時に先生が入ってきて会話は終了。私の頭に「すいせいぎゃっこう」という気になる言葉がくっついてしまった。



その言葉を発したのは後ろの席の高山くんという男子。席が前後だから、必要最低限の会話はしたことがあるけれど、出身小学校は隣の校区だったし、そんなに騒がしいタイプでもないから、あまりよく知らない。



「すいせいぎゃっこう」だと色々スムーズに進まない?今はその期間?高山くんはなんでそんなこと知っているのかな。私がアニメを見られなかったのも、そのせいだったのかなぁ...



聞いてみたかったけれど、あまりよく知らないクラスの男子に、それも自分が参加していないのに盗み聞きしてしまった会話のことを聞くなんて無理で、そのまま夏休みに突入してしまった。



8月の第一週、ウチの家族は必ずおばあちゃんのところに行く。すごい田舎で、周りに田んぼと畑と山しかないようなところだけれど、この時期は近くの神社でお祭りがあって、親戚が集まる。



子どもたちも本祭前夜の宵山には、夜なのに外に出て祭りを見たり、神社の境内にポツポツと出る屋台でかき氷を食べたり、ヨーヨー釣りをしたりする。



けれど、ウチの家族は宵山にもまだ早い昼過ぎに着いてしまったので、私はおばあちゃんに「神社でお札をいただいてきて」とお使いを頼まれた。



いただくと言っても無料ではない。おみくじもひいたらいいよと少し上乗せされた金額を受け取って、田んぼ道を神社に向かった。



夏の日差しがジリジリと焼くようだったけれど、田んぼのあたりにはとんぼが飛んでいて、いつも見る風景とは違うのが楽しい。



神社は、自宅近くのこじんまりした都会の中のに比べると境内がすごく広い。ほとんどは砂利で覆われていて、何本かの大きな杉の木が生えている。下から見上げて、何メートルあるのかなと思った。



境内の一角に大きな一階建ての建物があって、ぐるりと縁側がついていて、その片隅に「御札所」と墨で書いた紙が貼ってあった。



近づいて私は目を丸くした。なんと、あの「すいせいぎゃっこう」の高山くんがそこにいた。



高山くんも目を丸くしていた。中学からこんなに離れた場所で、同じクラスの人に会ったら、そりゃびっくりする。



「高山くん、だよね?お札?」なぜお札をいただく場所にいるのかと聞きたかったけれど、上手く言えなかった。



けど、高山くんは答えてくれた。「ここ、叔父さんが神主だから。オレ、毎年手伝いに来てる。」



「中学生なのに店番?」「小4からやってるよ。簡単な仕事だから。」



高山くんがちょっとだけドヤという顔をしたので、笑ってしまった。小さな古めかしい机の上にお札やお守りがたくさん並んでいて、お金を受け取ってこれらを渡しているんだな、ちょっと大人っぽいなと思った。



「私もおばあちゃんの家がこの近くで、毎年来てる。お祭り見に来てるよ。」



偶然だね!とまた笑ってしまった。高山くんも笑っていた。



持ってきていた古い方のお札を小さなバッグから出して、同じものを用意してもらい、いざお金を出そうと思ったら「あれ、ない!」バッグに入れたつもりの1000円札が見当たらなかった。



なんで!?忘れてきた?落とした?おばあちゃん家に戻る!?来た方を振り返り、ちょっとパニックぎみになっていたら「ポケットとかは?」と高山くんが聞いてくれた。



慌ててスカートのポケットに手を入れたら「あった!」そうだ..先に1000円をもらって、そのあと見本の古いお札があった方がとおばあちゃんと話して、お札はポケットに入らないからと持ってきたバッグに入れたんだ...



「あるある。水星逆行だからね。」



来た!すいせいぎゃっこう!



「それ、何!?」

思わず聞いた。

ちょっと前のめりになっていたかもしれない。



「水星逆行は、水星を地球から見たときに、本来の進行方向じゃなくて逆向きに動いているように見えることだよ。本当に逆行しているわけじゃないけど。」



「水星って、宇宙にある水星だよね?」「うん。地球より太陽の近くにある惑星だけど、俺が言ってるのは占星術のこと」



「せんせいじゅつ?」思わず、先生が魔法で術を使っているみたいな場面を想像してしまった。



「テレビとかで星占い、見たことある?」



それならある。私は魚座で、いつも一番最後に今日の運勢が読まれるやつ。



頷くと、高山くんはさらに続けた。よく見る星占いは太陽の星座だけを使うことがほとんどだけど、占星術では主に太陽や月やその他の全部で10個の天体を使うこと。



水星もそこに含まれること。水星は小さな惑星で、年に何回か逆行して見える期間があること。



「水星逆行のときは移動とか通信とかがスムーズじゃなかったり、以前のことを振り返ったり、思い出したりするって言われてるよ。」



そうなんだ。高山くんの話は難しい言葉も入っていて、全部はわからなかったけれど、お金がスムーズに出せなくて焦ったりパニックでオタオタしていた私はちょっとだけ励まされた。



それから、夏休み前からの疑問が解消した!



「ありがとう!」



と言うと、ちょっと嬉しそうに「どういたしまして。」と返ってきた。



「水星逆行は11日で終わるよ。それと、今はライオンズゲートが開いていて...」



その時、私の後ろから別のお客さんが来て、お札やお守りを選び出したので、話はそこで途切れてしまった。



高山くんの手が空くまで待つのも考えたけれど、急に恥ずかしくなって、高山くんがお客さんの対応をし始めたのを機におばあちゃんの家に戻ることにしてしまった。



そういえば、おみくじもできなかったな...



けれど、私の頭の中には今度はライオンズゲートという新しい言葉がくっついてしまって、ライオンが出入りする門の絵が頭の中でグルグル回ることになったのだった。



(続く)

水星逆行については、星読みテラスさんの記事を参考にさせていただきました↓

https://sup.andyou.jp/hoshi/mercury_retrograde_2025/