■ これまでのお参りと年末詣
何年か前から、私は年末詣(ねんまつもうで)をするようになりました。
新年にではなく、年の暮れに神社仏閣へ足を運ぶ――そんな習慣が、気づけば自分の中に根づいていました。
若い頃の私は、友人たちと初日の出を見に行ったり、夜更かしのまま初詣へ出かけたりもしました。 あの頃は「今年こそ!」という願い事ばかりに意識が向いていて、「昨年はありがとうございます」という感謝の言葉を意図したことはありませんでした。
やがてパートナーとの暮らしが始まり、お正月は家でゆっくり過ごすことが恒例になり、いつの間にか初詣に足を運ばなくなっていました。
■ 母がくれた“祈り”の時間
再びお参りをするようになったのは、母の病気が見つかったことがきっかけです。
病を封じるご利益があるといわれるお寺へ、毎年お礼と祈りを込めて通うようになりました。 その時間は、“願う”というより、“祈る”という感覚に近いものでした。
母が亡くなった後、これまでのお礼を伝えるためにそのお寺へ足を運びました。 それは11〜12月の、空気がきゅっと冷たくなる頃だったと記憶しています。 それが自然と、自分の中で年末にお参りをするという流れにつながっていきました。
■ 年末詣だからこそ感じるもの
年末に手を合わせると、まず最初に「この一年、ありがとうございました」という言葉がすっと出てきます。 以前、作法を調べたときにも“感謝を伝えてから祈願を”とありましたが、私の場合、初詣では願い事がどうしても先に浮かんでしまうのです…。
けれど年末だと、意識せずとも自然に感謝がこぼれるのです。
それに、混雑していない静かな境内でゆっくりお参りできることも大きな魅力です。
澄んだ空気の中で手を合わせると、年の終わりに心がそっと整っていくのを感じます。
■ 初詣でも年末詣でも、その人の形で
初詣が好きな人もいれば、年末詣が合う人もいます。
気が向いた時に、心が向いた場所へ足を運べばいい。
お参りの仕方に正解はなく、その人自身がいちばん素直でいられるスタイルがあれば良いのだと思います。
年末詣派の私は、今年も12月中に、充実した1年への感謝の気持ちと共に、静かに手を合わせる予定です。
それでは、また☆