誰もが持つ「見せたくない星」との出会い

私が初めて自分のホロスコープで冥王星の配置を深く読み解いた時のことを、今でもはっきり覚えています。

それまで太陽星座や月星座を中心に星を読んでいた私は、冥王星が私の月とぴったり重なっている──専門用語で言うと「コンジャンクション」している──ことに気づいたんです。占星術の本を開くと、そこには「深い変容」「破壊と再生」「執着」といった、少し怖いような言葉が並んでいました。

正直に言うと、その時の私は「この配置、見なかったことにしたい」と思いました(笑)。

でも、ふとこう考えたんです。この星の配置も、間違いなく私の一部なんだと。そしてその「見たくない部分」にこそ、私が本当に知るべき何かが隠れているんじゃないか、って。

今日は、そんな「光と闇の対話」について、占星術の視点からお話しします。自己探求という言葉を聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。でも実は、自分のホロスコープの中にある「輝く星」と「隠れた星」の両方と向き合うことが、本当の自分を知る第一歩なんです。

占星術における「光」と「闇」──太陽だけが私じゃない

占星術を少し知っている方なら、「太陽星座」という言葉を聞いたことがあるでしょう。雑誌の星占いで使われる、あの12星座です。太陽は、私たちの「意識的な自分」「社会に見せる顔」「目指したい方向性」を表します。いわば、光の当たる舞台に立っている自分ですね。

でも、ホロスコープには太陽以外にもたくさんの天体があります。

月は「感情」や「素の自分」「心の安らぎを感じる場所」を示します。これは太陽ほど意識的ではなく、どちらかというと無意識に出てくる自分です。家族や親しい人の前で見せる顔、とも言えるかもしれません。

そして、ここからが今日の本題です。

冥王星、海王星、土星、そして黒月リリス(これは実際の天体ではなく、月の軌道上の特別なポイントなんですが)──これらは、占星術の世界で「影」や「無意識の領域」を表す天体や感受点です。

私が占星術を学び始めて気づいたのは、多くの人が太陽星座の特徴は「そうそう!」と受け入れやすいのに、こうした影の天体が示す特徴については「うーん...」と顔をしかめることが多いということでした。

なぜなら、そこには私たちが「認めたくない部分」「隠しておきたい感情」「社会的に良くないと思っている自分の側面」が映し出されているからです。

でも、ちょっと待ってください。

その「闇」と呼ばれる部分も、紛れもなくあなたの一部なんです。そしてその部分に光を当てることで、初めて「自分を丸ごと理解する」という本当の自己理解が始まります。


なぜ「闇」を見ることが自己探求になるのか

私のセッションでよくこんなことがあります。

クライアントさんのチャート(ホロスコープのこと)を見ていると、例えば冥王星が7ハウス(人間関係やパートナーシップの領域)にあったりします。これは「人間関係において深い変容を経験する」「相手との間で支配やコントロールのテーマが出やすい」といった意味を持つことがあります。

最初にこれをお伝えすると、「えっ、私ってそんなに支配的なんですか?」と驚かれることが多いんです。でも、少し対話を続けていくと...

「そういえば、親しくなると相手のことが気になりすぎて、連絡がないと不安になります」 「パートナーの行動を把握していないと落ち着かないんです」

という言葉が出てきます。これは決して「悪いこと」ではありません。ただ、ご本人が「こんなふうに感じる自分はおかしいんじゃないか」と、その感情を隠してきただけなんです。

影の天体が教えてくれるのは、こうした「自分でも気づいていない深いテーマ」です。

心理学者のユングは「影」について、「人格の中で受け入れがたいと感じて抑圧した部分」と説明しました。私は占星術を通じて、この影の部分にアクセスできると考えています。

冥王星は「徹底的な変容」と「執着」を。 土星は「制限」と「責任」を。 海王星は「境界の曖昧さ」と「理想への憧れ」を。 黒月リリスは「本能的な欲求」と「抑圧された怒り」を。

これらの天体は、私たちが普段フタをしている感情や、「こうあるべき」という社会の期待の下に隠してきた本当の自分を映し出します。

そして──これがとても大切なポイントなんですが──この「闇」の部分には、実は大きなエネルギーが眠っているんです。

抑圧されたものは、逆に私たちを内側から動かします。認めたくないと思えば思うほど、無意識のうちにその力は働きます。だからこそ、影と向き合い、対話することで、そのエネルギーを意識的に使えるようになるんです。

光と闇の対話が始まる時──ホロスコープが示す「受け入れにくい自分」

少し前に、30代の女性のセッションを担当しました。

彼女の太陽は天秤座にあり、とても社交的でバランス感覚のある方でした。職場でも「いつも笑顔で穏やか」と評判で、ご本人も「私は争いごとが嫌いで、平和主義なんです」とおっしゃっていました。

でも、彼女のホロスコープを見ると、火星が蠍座の8ハウスにあり、冥王星とぴったり重なっていたんです。火星は「行動力」や「怒り」を表す天体。それが蠍座と冥王星という、どちらも「深く激しい感情」を象徴する配置にある。

私は丁寧に、でも正直に伝えました。「あなたの内側には、とても強い感情のエネルギーがあるようですよ」と。

最初、彼女は戸惑った表情をされました。でも、少しずつ話していくうちに、こんなことを話してくださったんです。

「実は...時々、自分でもびっくりするくらい怒りを感じることがあるんです。でも、それを表に出したらダメだって、ずっと思ってきました。怒っている自分は醜いし、周りに嫌われると思って」

そこから私たちは、彼女の「天秤座の太陽」(調和を求める光の部分)と「蠍座の火星×冥王星」(激しい感情という影の部分)の対話を始めました。

この対話を通じて彼女が気づいたのは、怒りの感情そのものが悪いのではなく、「それを抑え込みすぎていたこと」が問題だったということでした。そして、その激しい感情エネルギーは、実は彼女が何かを深く愛する力でもあり、不正に対して立ち上がる勇気でもあったんです。

光だけを見ていても、闇だけを見ていても、本当の自分は見えません。両方があって、初めて私たちは「全体としての自分」に出会えるんです。


実践ワーク:「内なる天体会議」で光と闇を対話させる

ここで、私がセッションでよく使う「内なる天体会議」というワークをご紹介します。これは、自分のホロスコープの中の異なる天体たちを、それぞれ独立した「声」として聴いていく方法です。

自己探求の実践として、とても効果的なんですよ。

準備するもの

  • あなたのホロスコープ(無料のサイトでも作成できます)

  • ノートとペン

  • 一人で静かに過ごせる30分

ステップ1:光の天体を選ぶ

まず、あなたの「意識的な自分」を表す天体を選びます。多くの場合は太陽ですが、月や水星でも構いません。あなたが「これが私の明るい部分だな」と感じる天体です。

ノートに「太陽の声」(または選んだ天体の名前)と書いて、その天体があなたに語りかけているとしたら、どんなことを言うか想像して書き出してみてください。

例:「私はいつも前向きでいたい。周りを明るくするのが私の役割だと思っている」

ステップ2:影の天体を選ぶ

次に、あなたが「あまり認めたくないな」と感じる天体を選びます。冥王星、土星、火星(特に難しいアスペクトがある場合)、または黒月リリスなどです。

同じように「冥王星の声」と書いて、その天体が何を伝えようとしているか、書き出してみます。

例:「私はあなたの奥底にある、手放せない執着を知っている。それを否定しないで」

ステップ3:対話を始める

ここが一番大切なところです。

ノートを開いて、左ページに「光の天体」、右ページに「影の天体」を書きます。そして、この二つに会話をさせるんです。

まるで台本を書くように。

太陽:「私はいつも明るくいたい。でも、時々とても疲れる」 冥王星:「それは、私(あなたの深い感情)を無視しているからだよ」 太陽:「でも、暗い感情を出したら、周りに嫌われるかもしれない」 冥王星:「暗い感情も、あなたの一部だよ。それを受け入れたら、もっと本物の明るさが出せるんじゃない?」

こんなふうに、対話を続けてみてください。

最初は不思議に感じるかもしれません。でも、書いているうちに、普段は聞こえてこない内側の声が浮かび上がってくるんです。私の経験では、この対話を続けていくと、だんだん「両方の声を聴いてあげられる自分」という、第三の視点が生まれてきます。

これが、心理学で言う「自己統合」の始まりです。

ステップ4:統合のメッセージを受け取る

対話が一段落したら、最後にこう問いかけてみてください。

「この光と闇の両方を持っている私は、これから何ができるだろう?」

ここで出てくる答えが、あなたにとっての「統合されたメッセージ」です。これをノートに書き留めておいてください。後で読み返すと、新たな気づきが得られることも多いんですよ。

闇と向き合うことで見えてくる「本当の自分」

影の部分と向き合うのは、正直に言って、簡単ではありません。

私自身、自分の冥王星と月のコンジャンクションを深く見つめた時、「こんなに執着深い自分は嫌だ」と思いました。でも、その「執着」を言い換えれば、それは「深く愛する力」でもあり、「一度決めたら諦めない粘り強さ」でもあったんです。

占星術を学ぶ前の私は、自分の感情の激しさを恥ずかしいものだと思っていました。IT業界で働いていた頃は、「論理的で冷静であるべき」というプレッシャーの中で、感情的になる自分を押し殺していたんです。

でも、占星術に出会って、自分のチャートと向き合って。

そこにある「影」と呼ばれる配置たちが、実は私の「深さ」であり、人の心に寄り添える「共感力」であり、物事の本質を見抜こうとする「探求心」であることに気づきました。

闇は、光がなければ存在できません。 そして光も、闇があるから輝きます。

私たちは、光と闇の両方を持っているからこそ、人間として深みがあり、成長していけるんです。

自己探求というのは、「完璧な自分」を目指すことではありません。光も闇も含めた「全体としての自分」を知り、受け入れ、そしてその全てを使って生きていくことです。

星の配置は変えられなくても、その受け取り方は自分で選べるんです。

あなたのホロスコープにある「受け入れにくい天体」は、実はあなたに「まだ使っていない力」があることを教えてくれています。その力は、光の下で輝く力とは違う種類のものかもしれません。でも、人生の深いところで、あなたを支え、成長させてくれる力です。


光と闇を統合する旅は続く

「内なる天体会議」は、一度やって終わりではありません。

私は今でも、何か大きな決断をする時や、心が揺れ動く時には、自分のチャートを眺めながら、それぞれの天体の声を聴くようにしています。太陽が「行け!」と言っていても、土星が「ちょっと待って、慎重に」と言っている時もある。そんな時は、両方の声をしっかり聴いて、バランスを取るようにしています。

あなたも、自分のホロスコープと対話する時間を持ってみてください。

最初は「この配置、嫌だな」と思うかもしれません。でも、その天体に「なぜここにいるの? 私に何を教えたいの?」と優しく問いかけてみてください。きっと、思いもよらない答えが返ってくるはずです。

光と闇の対話を通じた自己探求は、一生続く旅です。でもその旅は、「完璧な自分」を目指すのではなく、「ありのままの自分」を深く知り、愛していく旅。

そしてその旅の地図が、あなたのホロスコープなんです。

私は占星術カウンセラーとして、これからもたくさんの方のホロスコープと向き合っていきます。そこにある光と闇の両方を、丁寧に読み解きながら。そして、一人ひとりが自分の全体性を受け入れられるように、寄り添っていきたいと思っています。

あなたの内側には、太陽のような輝きもあれば、月のような静けさもある。火星の情熱も、土星の忍耐も、冥王星の深い変容の力も、全部あるんです。

その全てが、あなた。

今日から、あなた自身の光と闇に、優しく語りかけてみてください。きっと、今まで知らなかった本当の自分に出会えますから。