あの人の言い方、やっぱり少し引っかかるなあ。
でも、すぐに顔には出さず、「そうですね」と合わせておく。
子供の送り迎えの場や職場ではいつもそう。角を立てないように。波風を立てないように。
うまくやれているように見えて、どこかで窮屈さを感じていた。
自分を抑えるのが当たり前になっていたけれど、あるときふと気づいた。
帰り道、スーパーの袋を手に、ふと夜空の月を見上げたときだった。
「あの言葉は、自分にどう響いた?」
「悲しい?怒り?苛立ち?」
「喜ぶことじゃなかったよね?」
誰かの声じゃなくて、確かに自分の中から聞こえた気がした。
評価や期待に応えるのは悪いことじゃないけれど、そればかりじゃ、自分がどんどん遠くなってしまう。
そんな気がして、気づけば足は近くのコンビニへ向いていた。
ノートが欲しくなって。
私は、自分の大切にしたいものを、少しずつ言葉にする練習を始めた。
うまく伝えられなくてもいい。黙ってしまうよりずっといい。
今日も誰かに合わせた一日だったかもしれない。
けれど、帰り道の夜風にあたりながら、自分の気持ちに素直になれる時間が、ちゃんとここにある。
そう思えるだけで、少し楽になった。
そのうち、相手の言葉を受け入れながら、自己主張もできる自分になれたらいいな。
