「人々は黙して正作のするところを見ている。器械に狂いの生じたのを正作が見分し、修繕しているのらしい。桂の顔、様子!彼は無人の地にいて、我を忘れ世界を忘れ、身も魂も、今そのなしつつある仕事に打ちこんでいる。僕は桂の容貌、かくまでにまじめなるを見たことがない。見ているうちに、僕は一種の壮厳に打たれた」(国木田独歩「非凡なる凡人」)

 国木田独歩は8月30日生まれの太陽乙女座の小説家です。

 「非凡なる凡人」に描かれる桂正作は、なにか飛び抜けた才能があるわけでもないごく普通の、「平凡」な人物です。しかし、正作の友人である「僕」は、この「平凡」さにこそ「非凡」さを見出します。

 正作は真面目で、地に足のついた計画を立て、コツコツ努力をすることで、着実にその計画を達成していきます。正作の日々の勤勉さは、とても地味で、華やかな冒険とは無縁です。それでも、この「平凡」さを何年、何十年と継続していくことは、実はとても難しいことでもあるのです。

 当たり前の習慣を当たり前に続けていく、その「当たり前」を実行することにこそ、「非凡」なる才能が必要なのだと考える「僕」の視点には、乙女座のストイックな真面目さと、一見些細な出来事からも新しいものを発見することができる観察眼の鋭さが垣間見えます。

 「平凡」の中に「非凡」を見る、そんな乙女座の繊細な分析力を存分に感じることができるのが、独歩の「非凡なる凡人」なのです。

☆国木田独歩「非凡なる凡人」https://www.aozora.gr.jp/cards/000038/files/324_15711.html