「あれは確か25年前、オディがまだ生きていた頃…」
謎の呟きからはじまった物語
安らぎの生まれるところ -2- | Owlbook(アウルブック)
寂しさとつながり -3- | Owlbook(アウルブック)
の続きです。
今回は、
4・6ハウス 金星、月、土星の声をメインに
にじませて描きました。
星からメッセージを届ける時
違和感がともなうことが
わたしにはあるのですが、
物語に溶け込んでいると
しっくり来たところを受けとれるのが
よいところ。
天体やサインやハウス
あなたにはどんな声が
浮かび上がってくるでしょうか?
˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。

通りから少し入ると
軒先に干したハーブが揺れている家があった。
おばさんは、そこで宿をしていた。
ネネが先に入って、
奥でひそひそと何かを話す声がすると、
やがて、がらりと戸が開いた。
おばさんは、腕を組んでミロを上から下まで見た。
「泊めるのはいいけどね、タダじゃないよ。」
声は低いけれど、
あたたかい空気を感じる。
「掃除と、食事の準備の手伝い。
それくらいはしてもらおうかね。」
ミロは、ほっとしたように頷いた。
条件がある、というのは
どこか安心でもあった。
ネネは横で、 「ね?」という顔をしている。
*◦……☆……*◦*……☆……◦*
「まずは荷物を置いておいで。」
そのとき、 白い塊が動いた。
おばさんの足元に座りなおした犬が
「どうも、」とでも言ったのだろうか
一度だけ、ファサッとしっぽを振り、
ボクを気にしている。
「まぁ、真っ黒な手だこと。 先にお風呂だね。」
通路の奥へ目をやると、
横手に小さな庭が広がっていた――
低く広がるタイムのあいだに、
細いレモングラスが風に揺れている。
ローズマリーは木のように枝を伸ばし、
バジルの葉は、やわらかく光をはね返して
土も葉も一緒に暮らしているみたいだった。
*◦……☆……*◦*……☆……◦*
「……ふぅ。」
湯に身を沈めると、
じん、と冷えが溶けてゆく
ぱち、とはぜる音
外で、誰かが、
薪をくべてくれている。
湯から上がると、
台所ではまな板の音がしていた。
*◦……☆……*◦*……☆……◦*
「玉ねぎ、切れるかい?」
おばさんは宿のお客と話しながら、
ちらりとこちらを見て言った。
土間に、ごろりと土のついた玉ねぎが転がっている。
ミロが手に取って剥くと、
ネネが横からのぞきこんだ。
「玉ねぎさんは親切でしょう。ちゃんと切り取り線をつけてくれてるの。」
よく見ると、表面の白に うっすら緑色の線が走っている。
「こうやって置いて、」

ミロがそこへ刃を当てると、すっと入る。
玉ねぎと向き合うあいだに、
ネネは人参を手に取った。
「わたし、人参のここ好きなの。捨てないでね。」
そう言って、 葉のつけ根を指でなぞると
くるりと回しながら、黒ずみを、器用に削いだ。
とん、とん、とん…
「葉っぱは、炒め物にするとおいしいのよ。」
少し青い匂いが混ざった。
さっきまで切れ端に見えていたものが、
素材になっている。
「わ、てんとう虫!」
ミロの頭をみてネネが叫んだ
「ふ、うははは!」

飛んでいった赤い点を目で追っていたら
ボクはなんだか無性に笑いがとまらなくなって
久しぶりに声をあげて笑った。
ネネはいつものことのように、
でも楽しそう。
玉ねぎの匂いが立ちのぼって
少し、目にしみていた。
「味見、してみな。」
小皿にとったスープを…
「おいしい。」
「そうだ、マルさん、ちょっといいかい。」
おばさんが外へ声をかけると
薪割りの音が止まり
戸口の向こうから、 ひょいと顔がのぞいた。
すこし日焼けした鼻と
ズボンには木くずがついている。
「なんだい、イリヤ、また増えたな」
「あれ弦、直せるかい?」
おばさんは、 ミロの楽器をさしていった

「ほう……いい木だ
「弦が切れてて、弾けない。
……いや、鳴らしてたな。」
「今夜は張れないが、 素材はある。 明日にはなんとかなるさ。」
*◦……☆……*◦*……☆……◦*
「さぁ、お客さんの食器を先に用意しておくれ。」
マルさんがランプに灯をともし、
ネネは皿を抱えながら、
目くばせでボクにスプーンを持たせた。
あたたかな夕飯。
それから—— 十人と、一匹ぶんの後片付け。
家の中に、 ゆっくりと夜が降りた。