「あれは確か25年前、オディがまだ生きていた頃…」

謎の呟きからはじまった物語

オディの古瓶 -1- | Owlbook(アウルブック)

安らぎの生まれるところ -2- | Owlbook(アウルブック)

寂しさとつながり -3- | Owlbook(アウルブック)

暮らしのリズム -4- | Owlbook(アウルブック)

の続きです。


今回は、

12・1ハウス 冥王星、海王星、水星、地球の声が

聴こえてきています。


星からメッセージを届ける時

違和感がともなうことが

わたしにはあるのですが、


物語に溶け込んでいると

しっくり来たところを受けとれるのが

よいところ。


天体やサインやハウス

あなたにはどんな声が

浮かび上がってくるでしょうか?


˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。


翌朝――



宿のお客さんを見送り、

ひととおり静まるころ、

ネネがくるりと振り向いて言った。

「ミロ、準備できてる?」

声が弾んでいる。

「ワン!」

犬が一声鳴き、しっぽを振った。


「あはは、ハロも行きたいの?」

「マルさーん、峠の入り口まで送ってもらえる?」


薪を組み直す音が止まった

「おう、ちょっと待ってな。」


やがてエンジン音がして、

軒先に小さな車が停まった。

ボクはポケットの瓶を確かめて、

ネネとハロと一緒に乗り込んだ。


峠へ向かう道は、

町の気配が少しずつ薄れていく。


土と小石の道が細くなり、

車が入れなくなったころ、

遠くで水の落ちる音がした。


滝だ。


鼻をクンクンさせながらハロが先頭を歩く

近づくにつれ、

空気がひんやりと湿りを帯びてきた―


滝壺は深くなく、

水しぶきが届くか届かないかのところに、

平たく黒い大きな石があった。


表面は少し曇り、

縁を苔が覆い、

中心は滑らかに磨かれて光っている。

ハロは石へ近づくボク達を見守るようにそっと座った。


(黙ってる―

でも、詰まってなんかない。ちゃんと呼吸している。)


ボクは、そう思った。


「ネネ。この石は——祈り石は、みんなが祈る石なの?」

「うーん……ここに座るとね。」

ネネは足先をトンと鳴らした。


「ざわめきが消えるの。」

彼女は石を軽く撫でた


風が吹き抜けてゆく



水の音。

葉のこすれる音。

自分の呼吸。


「イリヤは、零の場所だって言ってた。

心の波が無くなるって。」


ボクも座った。


「ネネ、オディって知ってる?」

「直接は知らない…」


「石守りって呼ぶ人もいた。

でも守ってたのは石じゃなくて、

人のほうかもしれないって。」


ボクはポケットから古瓶を取り出して、

栓を開けてみた――


(……。)




「なにも。」

ネネは肩をすくめる。

「うん。瓶だもん。」


瓶だ―

空洞にも、器にもなる入れ物だ――


石は詰まっても濁ってもいない。

ただ、感じる人を映す――

それが祈り石。

肩の力が、ふっと抜けた。


何かが起こるわけじゃない

ボクが、ボクなだけ。


でも——

こんなに気持ちいい。


瓶は、ただ瓶だ。

石は、ただ石だ。

ボクがボクでいるとき、そこにはすべてがある。


ボクは栓を閉めた。

ハロがスッと立ち上がった。


「……行こう。」

ネネも、ニッコリしてうなづいた。