古代メソポタミアの粘土板「ムル・アピン」に記された月の旅
「ムル・アピン(MUL.APIN)」は、古代メソポタミアの天文学と占星術について記された粘土板です。「星のカタログ」のような面もあります。
シュメール語で、直訳すると、「(犂すき)星」になります。66の星と星座、天体の動きなどについても記されており、現在の星や星座と対照してみることができます。
→バビロニアの星座の名前 - 古天文の部屋神々が天界を3つに分けて支配していた
「ムル・アピン(MUL.APIN)」によると、古代メソポタミアでは、以下の神々が天界を3つに分けていると考えました。
・至高神エンリル神 ・天空神・星の神アヌ神 ・水・生命の神エア神天界の3区分
・北極星の周囲を回転する星々の領域(33の星または星座)…「エンリルの道」 ・天空の最も高く東西に広がる領域(23の星または星座)…「アヌの道」 ・南側、星々が長時間地平線の下にある領域(15の星または星座)…「エアの道」この中の「アヌの道」は、幅が約±17°の天の赤道を囲む帯と考えられていました。
30°ずつ12等分し、暦として理想的な月(month)を表している、としたのです。月の通り道を旅する、天体たち
当時は、太陰暦。このアヌの道が月の経路であることに注目し、「月の旅する道」と認識していました。
太陽・水星・金星・火星・木星・土星の運行も観測し、「月が旅する同じ道を旅する」ということを記しました。
これら同じ場所を旅する六柱の神々は、天空の星ぼしの間を旅しながら、常に場所を変えていく。 「星座の起源 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史」 著・近藤二郎 誠文堂新光社
現在、太陽の通り道を黄道、月の通り道を白道と呼んでいますが、古代の人々は、惑星も同じような道を辿ることを不思議に感じていたのかもしれませんね。
参照
書籍:「星座の起源 古代エジプト・メソポタミアにたどる星座の歴史」 著・近藤二郎 誠文堂新光社
Web:Wikipedia(バビロニア、月宿、エンリル、アヌ (メソポタミア神話)、エンキ、MUL.APIN(英語))Web:<12> 2章 アッシリア時代/ムル・アピン - 占星術への道-誕生史、星見の作法Web:おおかみ座の探索1(エジプト文明を春分点と極星で区分けする、目からうろこの古代メソポタミア占星学)|Noelの備忘録