「あれは確か25年前、オディがまだ生きていた頃…」

謎の呟きからはじまった物語。


天体やサインやハウスを

ストーリーと体感でお届け中です。

今回は、

7ハウス(ほんのり8・9の匂い) 

天王星、木星の声が

聴こえてきています。


あなたにはどんなテーマが

浮かび上がってくるでしょうか?


オディの古瓶 -1- | Owlbook(アウルブック)

安らぎの生まれるところ -2- | Owlbook(アウルブック)

寂しさとつながり -3- | Owlbook(アウルブック)

暮らしのリズム -4- | Owlbook(アウルブック)

祈り石の秘密 -5- | Owlbook(アウルブック)

指先が奏でる音-6- | Owlbook(アウルブック)

名乗らない男 -7- | Owlbook(アウルブック)

˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。


ある夕方。

宿の前で薪をくべていると

戸口に立つ男に気づいた。



目が合うと男はこちらへ向き直り

帽子を取った。


「私はガシェル。

海を渡って古物商をしています。

宿を頼みたいのですが──

キミは、ここの人かな。」


ボクは立ち上がり、

手についた薪の粉を払った。

「はい。

ありがとうございます。ご案内します。」


*◦……​☆……*◦*……​☆……◦*

夕食のとき、

少し気になっていたボクは皿を置きながら言った


「……このあたりは、何もない町ですが。

お仕事ですか。」


ガシェルはスープに落としていた目を上げ

少し口元をゆるめた。

「何もないことは無いよ、いい街だ。」


「楽器をやるのかね。」

「えぇ、今晩も。愉しんでいただけたら…」

「楽しみだ。」


*◦……​☆……*◦*……​☆……◦*

夜。

ランプの火が、静かに燃えている。

ボクはいつものように弦を鳴らした。


ネネの声が重なり、

音は梁を伝って、ゆったりと響く


お客たちは、

それぞれの過ごし方で聴いている。


ガシェルは、椅子に深く腰をかけ、

目を閉じるでもなく、

ただ、そこにいる。


一曲。

二曲。

三曲。


ひとしきり聴き、

皆が部屋へ引きあげはじめたころ。


*◦……​☆……*◦*……​☆……◦*

ガシェルが口を開いた。


「……港から、春に出る船がある。」


「南へ向かう船だ。私は、それに乗る。」


視線はまだ、

ランプの火に向いている。


「キミも――

一緒にどうかな。」


「……え?」


火が、静かに揺れる。

ボクは、一瞬、理解が追いつかず

部屋の空気が、わずかに変わった。


「少し待つよ。」


ガシェルは、

火から視線を外さずに言った。



「聞きたいことがあれば、

いつでも声をかけてくれ。」


*◦……​☆……*◦*……​☆……◦*

ボクは、驚いた。

どう言葉にしていいのかわからなかった。


ネネは、聞いていただろうか

お皿を重ねながら、

何事もないようにしている。


片づけが終わると、

いつものように灯りを落とした。

ボクも、

いつものように床に入った。


目を閉じる。

けれど、

ガシェルの言葉が、消えずに残っていた。