朝、トーストの焼ける匂いと同時に、言い合いがはじまった。
「またその話?前にも言ったよね」
夫の言葉に、私の口から反射的に出た言葉は、きっと強すぎた。
時間がない朝だった。着替えながら、髪をまとめながら、言い合いの続きを頭の中で繰り返していた。「あんな言い方、なくない?」「私、なにか間違ってた?」そんな思いが、エレベーターの中でも、電車の窓に映る自分にも、まとわりつくように離れなかった。
会社では目の前の仕事に集中しようとしても、心の奥でずっとくすぶっている。
あの人は今、何をしているだろう。もう忘れてるかな?それとも、同じようにモヤモヤしてるだろうか。
だって、私はあなたに関心がある。ちゃんと見てる。わかってほしい、なんて、勝手かな。
心の中にある“夢”のことも、最近はあまり話せていない。
今は会社で働く日々だけど、いずれは自分の足で、小さくてもいいからお店を開いてみたい。
その話をしたとき、あなたは「いいじゃん」って笑ってくれた。
その一言が、どれだけ私の背中を押してくれたか。
だから、もっとちゃんと、言葉を交わしたい。すれ違いじゃなく、手渡しで。
夜、家の灯りがやさしく見えてくる頃、私は決めていた。
今日は、ちゃんと謝ろう。
そして、もう少しだけ本音を話してみよう。
「朝はごめんね」
その一言から、また明日をはじめたい。
···今日はそんな日。
