きのう家族がふと口走った謎のセリフ
「あれは確か25年前、オディがまだ生きていた頃…」
そこから何となくイメージが膨らみまして、
(オディって、何者だろう?こんな世界観かな…)
そんな想像から紡がれ始めたチャネリングストーリーです。
私自身もどこに向かっているのか分からないのですが、
生まれてきたのでそっと置いてみます。
テーマは継承と深い絆の8ハウス
冥王星×海王星
何となく気になったなら、
あなたもストーリーの登場人物なのかも?
よかったらお付き合いくださいね。
˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。˖✻*˸ꕤ*˸*⋆。
「あれは確か25年前、オディがまだ生きていた頃…」
そう言いながら古老は
戸棚の奥から古びた小瓶をそっと取り出し、
皴皴の指先でひと撫でし、埃をぬぐった。
「お前は、よく似ている…」
「……その瓶は何ですか?随分古そうですね」
「古いのは瓶じゃない。約束のほうじゃ」
古老は目を細め、
ゆっくりと腰をおろすと、静かに語りはじめた。
「これは、村に伝わる 声をしまう瓶 じゃ。」
「こ、声をしまう…?
その瓶には、なんの声がはいっているのですか?」
「声はな、言葉じゃない、言葉の前から漏れてくる」と笑った。
「どういうことですか?」
古老は指で自分の喉元をとんと叩き、
「ここじゃない。胸の奥——もっと深いところから、にじむんじゃ」と言った。
「深いところから、、」
そう呟きながら、
ボクは自分の胸に手を当てて黙り込んだ。
すると古老は、
まるで待っていたみたいに小さく頷いて——
「ほれ、もうきこえとる」と囁いた。
「あの、ボクが似ているとおしゃいましたよね、オディさんに。」
古老は遠い火の色を見つめ、
「黙り方がの、、」と言った。
「あの…きこえている声は、なんと?」
古老は小瓶を顔のまえにかかげて、
しばらく息を止めると、
「――“まだ、ここにいる”かの。」
「ここにいる、ですか…
しばらく、ここにいてもいいですか?」
古老は焚き火の脇を手で払って場所を作り、
「火が消えるまでは、誰も追いはせん」
と言った。
「ありがとうございます…」
そう静かに返すと、
ボクは長老の作ってくれた焚火の近くの場所に座り直した。
「開けるなら、今じゃ。」
古老は小瓶を差し出した
「ボクが開けるんですか?」
古老は小さく笑い、
「開けるのは誰でもできる。
だが——きけるのは、お前だけじゃ、
……それとも怖いか?」
と言った。
「意味がわかりません…が、とても気になっています。」
古老は頷き、
「なら気になるままにせい。
瓶は“答え”を入れる器じゃない。
問いを育てる器じゃ」と静かに言った。
ボクは、静かに瓶の栓を抜いて、耳を澄ました。
——風の音でも、火の爆ぜる音でもない。
胸の内側が、ふっと震えるような音がした。
(音ともわからないような音、、声じゃないのか…)
そう思いながらも目に涙がにじんだ。
古老は、ただ焚き火に小枝を一本くべ——
「それでええ。声は、出たい場所から出るもの」と呟いた。
「これは、オディさんの涙と同じなんでしょうか…
とても懐かしい、寂しいような美しいような
何かを思い出します。」
ボクは心の向くまま、
1本弦の切れた楽器を手に取ると、そっと鳴らし始めた。
と、——瓶の底で、沈んでいたはずの“なにか”が、
音に引かれるようにゆらりと立ち上がった。

古老は息を呑み、
「続けよ……その旋律は、呼び鈴じゃ」と震える声で言った。
(呼び鈴ってなんのことだろう…)
そう思いながらも、ただ弾き続けた。
すると、
焚き火の火がふっと青く揺れ、瓶の中から——かすかな鼓動が返ってきた。ボクの中で何かが息を吹き返しはじめていた。
(オディとは、いったい誰なんだ…ボクではない、ボクのような…沈黙が似ているって何だろう…)
湧き立つ何かを感じながら、
黙って弾き続けた。
すると、瓶の口から——煙でも光でもない、
薄い糸みたいなものが一筋、すっと立ちのぼった。
それは空中で揺れ、ボクの指先と同じリズムでゆっくり形を変えていった。
「……オディは、人の名じゃない。役目の名じゃ。」
「役目……声をしまう瓶、、約束とはどういうことですか?」
「ボクはこの地にゆかりのある者ではありません。旅の予定にはなかったのですが、天候不良で、なぜかこの地へ迷い込んでしまいました。
泊めてもらえて助かりましたが、この体験がまだ現実のものとは思えません…」
古老は、火の粉が夜へ溶けていくのを見届けてから、ゆっくり言った。
「迷い込んだ、のはな……『道の側』が迷うた時でもある。」
そして、瓶をそっと焚き火の明かりにかざすと
底に残った薄い糸が、ボクの弦の震えに合わせて、かすかに震えた。
「この瓶は、声を閉じ込めるための器ではない。
還る場所を、忘れないための器じゃ。」
古老は、掌を開いて見せた。
皴皴の溝に、かつての傷跡か、月のように一本走っている。
「昔——二十五年前、この村には
“きこえすぎる者”がおった。
人の痛み、祈り、嘘、希望
……全部、胸に入ってしまう者じゃ。
きこえるがゆえに、言えなくなる。
言えないがゆえに、黙る。
……それが、村を守ったこともあれば、
壊しかけたこともある。」
古老は瓶の口に指を置き、静かに続けた。
「だから、約束をした。
声は、ひとりで抱えないこと。
しまうのは、押し込めるためじゃない。
ふさわしい次の場所へ預けるためじゃ。」
古老は、ボクを見た。
その視線は責めるでも、試すでもない。
ただ確認みたいに静かだった。
「お前は、この地の生まれではないと言うたな。
じゃが——この瓶は、血筋には反応せん。
沈黙の質に反応する。」
焚き火がぱち、と鳴った。
瓶の内側の薄い糸が、今度ははっきり“音のかたち”になって、ボクの耳の奥を叩いた。
「天候不良で迷い込んだ?……ふむ。
それも、よくある口実じゃ。
風は、必要な者を必要な場所へ運ぶ。
運ばれた者は、最初は皆、“自分の現実じゃない”と言う。」
古老は、瓶をボクの前に置いた。
「さて、約束の続きじゃ。
この瓶は、開けた者に答えはくれん。
代わりに——問いの続きを渡す。」
そして、声を落とした。
「オディはな、
“声が生まれる前の場所”——
泣きたいのに泣けん者、言葉にできん者の“奥”から、
世界へ橋をかける役目じゃ。」
古老はボクの楽器の欠けた弦に視線を向けている。
「一本弦が切れながら、鳴る。
それは、お前の道具の不思議ではない。
お前の中の欠けが、成せること。」
「現実じゃないと思うなら、確かめればよい。
……瓶の中の声に、ひとつ返してみい。
言葉でも、音でも、沈黙でもいい——
お前は何を返す?」
ボクは、耳を澄ました。
……たくさんの声が、そこにいた。
言葉の形になりきれないまま、
折り重なって、長いあいだ、息を止めていた。
(もう随分永いあいだ、ここに留めていたんだね。)
喉の奥が、熱いのとも冷たいのとも違う、
妙な痛みで満ちた。
でもそれは、苦しさじゃなく
『ほどける前の固さ』だった。
ボクは、瓶へ向けて、できるだけ静かに言った。
「……ただ実は、ボクは助ける役ではないんだ。
救うことも、引っ張ることも、できない。
でも——解くことなら、できる。」
言ってから、指先を楽器の弦に触れた。
切れているはずの一本が、かすかに震えた。
「弦が切れているから弾けないんじゃない。
“弾かない理由”にそれを使うかどうかは、
ボクの自由なんだ。」
その瞬間——
瓶の底で、薄い糸が、ふっと明るくなった。
音のかたちは、耳の奥だけじゃなく、
胸の中心へ落ちてきて、そこに小さな結び目を作った。
古老が、息を吐く音が聞こえた。
「……ほう。」
焚き火は一瞬青く揺れ
窓の外の霧が、まるで誰かの呼吸に合わせるみたいに、ゆっくりと動き始めた。
「どうやら霧が動くようじゃ、それを持ってゆけ」
古老はそう言って、瓶を両手で包むように持ち直し、
ボクの掌の上へそっと預けた。
瓶は熱くも冷たくもないのに、
掌の中心だけが、ゆっくり温まっていく。
まるで、そこに席ができたみたいに。
「……どこへ?」
ボクが問うと、古老は窓の外を見た。
山々は闇に沈み、霧だけが、谷筋を這うように流れている。
「霧が向かう先じゃ。
峠へ向かう道の途中に、古い石がある。
人が祈りを、言葉を、
こころに置ききれんものを置いてきた石じゃ。」
古老は一拍置いて、低く付け足した。
「その石はな、人の世でいう二千五百年、黙っとる。」
古老はそう言って、炉の火をひとつだけ整えた。
「黙っている、というのは……忘れている、ということですか?」
ボクが問い返すと、古老は首を振った。
「忘れとるんではない。詰まっとるんじゃ。
言葉にできん願いが、そこで止まっとる。」
瓶の口が、ふいに窓のほうへ向いた。
薄い糸が、霧の動きと同じ速さで、わずかに震えているようだ。
「お前がやるのは、戦いでも救いでもない。」
古老はボクの欠けた弦を見て、静かに言った。
「……ほどいてやってくれ。」
その石へ、瓶を連れてゆけ、
そして、返事をするんじゃ。今みたいに。」
ボクは瓶を抱え、立ち上がろうとした。
その瞬間、炉の火がまた——青く揺れた。
外の霧が、まるで道の形を思い出したみたいに、
一本の筋になって伸びてゆく、
筋の先は、闇の中へ消えているのに、
なぜか“行ける”と分かった。

「……霧は、お前を迷わせん。
必要なものを映すじゃろう。」





